Kaiのプログラミング本レビュー

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数学のミレニアム懸賞問題について(リーマン予想編)

ミレニアム懸賞問題とは

数学におけるミレニアム懸賞問題とは、アメリカのクレイ数学研究所によって、2000年に発表された100万ドルの懸賞金がかけられている7つの問題のことである。そのうち1つは解決済み、6つは2022年の時点で未解決である。ミレニアム賞問題、ミレニアム問題とも呼ばれる。

 

その問題は、以下の7つである。

  • ヤン–ミルズ方程式と質量ギャップ問題
  • リーマン予想
  • P≠NP予想
  • ナビエ–ストークス方程式の解の存在と滑らかさ
  • ホッジ予想
  • ポアンカレ予想
  • バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(BSD予想)

この内、ポアンカレ予想のみが、2002年から2003年にかけて、当時ステクロフ数学研究所に勤務していたロシア人数学者グリゴリー・ペレルマンによって解決されています。

 

このブログでは、この問題の内、以下の4つを1つずつ解説します。

今日は、その内の一つ、リーマン予想について解説したいと思います。

 

リーマン予想

リーマン予想とは、以下の内容の予想である。

 リーマンゼータ関数  \zeta(s) の全ての非自明な零点の実部は  \frac{1}{2} である。

 

リーマンゼータ関数とは、関数の事です。

関数とは、学校で習う  y=x y=x^{2} の事です。

リーマンゼータ関数も、その関数の事を表しています。

そのリーマンゼータ関数は、以下の数式で表されます。

 \zeta(s)=1+\frac{1}{2^{s}}+\frac{1}{3^{s}}+\frac{1}{4^{s}}+\frac{1}{5^{s}}+…

この時、変数sは複素数です。

 

複素数とはを説明する前に、まず実数と虚数の説明をします。

 3\times3=9 (-2)\times(-2)=4 など正の数にしろ負の数にしろ、同じ数を二つ掛けると必ず 0 以上の数になります。

この時の、 3 -2 を実数と言います。

 

それに対して、同じ数を二つ掛けて負の数になるような、その数を虚数と言います。

 i\times i=-1 となる  i が定義されており、この  i を用いて様々な虚数を表します。

二回掛けて  -9 になるような値は  3i となります。

 3i\times3i=-9

 

そして、この実数と虚数を足したり引いたりして表した数が複素数です。

例えば、  6+2i 8-3i などが例になります。

 

次に、リーマン予想の定義の説明に戻りますが、「非自明な零点」の説明をします。

零点とは、その関数が  0 になる時の変数の値です。

例えば、 x+3 の零点は  x+3=0 になる時の  x の値なので  -3 です。

「自明な」とは容易にわかるという意味です。

つまり、「非自明な零点」とは、関数の値を  0 にする変数の中で見つけるのが難しいものです。

 

リーマンゼータ関数の自明な零点は、 -2,-4,-6, \quad … のような負の偶数になります。

でも、リーマンゼータ関数

 \zeta(s)=1+\frac{1}{2^{s}}+\frac{1}{3^{s}}+\frac{1}{4^{s}}+\frac{1}{5^{s}}+…

にこれらを代入しても  0 にならなそうですよね。

実は、リーマンゼータ関数がこの形で書けるのは、特殊な条件(  Re(s) >  1 )の時だけで、負の偶数の時は別の形になります。

 

最後に、実部とは、複素数の実数部分の数の事です。

 5+3i の実部は  5 になります。

 

つまり、リーマン予想

 リーマンゼータ関数  \zeta(s) の全ての非自明な零点の実部は  \frac{1}{2} である。

とは、

 \zeta(s)=1+\frac{1}{2^{s}}+\frac{1}{3^{s}}+\frac{1}{4^{s}}+\frac{1}{5^{s}}+…

の値が0となる時の、 s の値のうち見つけるのが難しいものは、

 \frac{1}{2}+ i で表される。

という意味です。

リーマン予想が正しいと何の役にたつのか

リーマン予想が正しいと謎が多い素数の理解が進むとされています。

リーマンゼータ関数を式変形すると以下のようになります。

 \zeta(s)=1+\frac{1}{2^{s}}+\frac{1}{3^{s}}+\frac{1}{4^{s}}+\frac{1}{5^{s}}+…
 \qquad\qquad =\frac{1}{1-2^{-s}}\times\frac{1}{1-3^{-s}}\times\frac{1}{1-5^{-s}}\times\frac{1}{1-7^{-s}}…

 

この時、分母の  2,3,5,7 というのは素数です。

つまり、リーマンゼータ関数は、全ての自然数と全ての素数の関係を表している非常に重要な関数だったのです。

また、リーマンゼータ関数の非自明な零点というのは、素数の個数と密接に関わっているという事がわかっています。

素数の個数をある程度の精度で求められる素数計数関数  \pi(x) というのがあるのですが、これを使う時に、非自明な零点が関わってくるのです。

なので、リーマン予想が正しいという事が証明出来れば、ある範囲にどのくらいの素数が存在するのか分かるという事です。

今までの所、コンピュータによって10兆個の零点までは実部が  \frac{1}{2}、つまり、リーマン予想が正しい事が証明されています。